2022.07.28 大石龍弥 × 渡邊睦
NEW ENERGY特別賞|受賞者対談【前編】

大石龍弥 × 渡邊睦 NEW ENERGY特別賞|受賞者対談【前編】

「若い才能を発見し、世に送り出す」の精神のもと、1956年に創設されたファッションコンテスト「装苑賞」。そのフィロソフィーに共感し、今年96回目を数える歴史あるファッションコンテストにて、【NEW ENERGY特別賞】が新設されました。去る6月に本特別賞を受賞した大石氏と、NEW ENERGYのコンセプター兼クリエイティブディレクターである渡邊睦との特別対談をお届けします。「ファッションには社会を変える力がある」そう語る渡邊が、栄えある第一回受賞者となった大石氏のENERGY(エナジー) に迫ります。*対談中、話者の敬称は省略させて頂きます。

生活そのものが刺激に満ちたイタリア留学体験


渡邊) 最初に、大石さんのこれまでの歩みを聞かせて下さい。

大石) 私は広島のファッション専門学校で3年間学んだ後、研究生として在籍しつつコンテストに参加するという日々を送っていました。そんな中、当時あった「神戸ファッションコンテスト」に参加、そこで受賞し、副賞である留学プログラムを使ってイタリアに留学することになりました。
イタリアではミラノにある「インスティテュートマランゴーニ」というファッションデザインの専門学校でマスターコースを1年間受講。卒業後は、ミラノファッション協会が主催しているコンテストでファイナリストに選ばれて、ミラノファッションウィークのオンスケジュールでショーをさせて頂く機会にも恵まれました。


第96回装苑賞公開審査会 大石氏作品

第96回装苑賞公開審査会 大石氏作品


その後は、もともとミラノで働きたいと思っていたので、就職活動をしながら様々なチャレンジをする中で、色々な出会いもあり、何かしら彼らと仕事をするイメージや繋がりが出来きてきたタイミングで帰国することに。帰国後はHIROKO KOSHINOでインターンを経験し、地元である広島に戻った現在は「服装作家」という肩書で活動しています。

渡邊) なるほど、イタリアってどのくらいの期間行ってたんですか?

大石) マランゴーニでマスターコースに一年間通い、その後、語学学校に通いながら就職活動のようなことをしていました。合計で2年半ぐらいの間でした。

渡邊) イタリアでは、いわゆる現地の暮らしを体験したのかな?

大石) ホームステイからスタートし、まずはイタリア人の生活にしっかり慣れること、出来る限り現地の方と接する機会を増やすように意識しながら生活していました。

渡邊) 凄い、いい体験ですね。そのイタリア生活の中で、印象的な体験というか、思い出に残ることなどありますか?

大石) 生活すること全てに影響を受けました。とくに学校では、日本で学んできたこととのギャップを強く感じました。日本では、独自のファッション感覚みたいものを勉強していたんだな、と。イタリアではとにかく表現の自由度が高く、様々なスタイルのブランドが多様に存在している、そこがいいなと思いました。なにより日常的に学ぶことがすごく多い、服に対する考え方も変わりました。

渡邊) なるほど、そうでしたか。
私も、欧州と日本との決定的な違いは、ファッションが文化として成り立っていて、日常に浸透していることだと思います。自分のスタイルをきちんと持っているし、それを存分に楽しんでいる、という感じかな。沢山の人が集まると、本当に色々なスタイルがせめぎあい、その個性をみんなが受け入れている。それが表面的なものではなく、板についていて格好いい。洋服の着方、何より楽しむ方法を知っていると感じますね。

大石) 確かに、一人ひとりのテイストの幅が広いですね。自己表現にもメリハリがあり、華やかに行くところは、とことん華やかにする、そんな感じです。反対に、日本は周りの反応を意識しすぎて、結果自己表現を抑えてしまう人達が多い印象です。イタリアは、自分のスタイルを確立している人たちの集合体だから、それぞれの表現に批判をする感覚がなく、その差を個性として認めた上で関係性が成り立っている。個性を尊重する成熟したソーシャルが存在し、当初そこにカルチャーショックを受けました。

渡邊) うんうん、分るな…。そういう経験が大石さんのベースにあるんですね。

大石) 表面的な部分というか、どう見えているか?という事に関して、きちんとリスペクトしているところが印象的でした。自分自身も、そこ(表面的な部分)に哲学を持って臨んでいきたいと強く感じました。

渡邊) うん。いいね。ところでイタリアは楽しかった?


ミラノ時代の大石氏の作品

ミラノ時代の大石氏の作品

大石) 楽しかったですね!
私はそれまで日本での生活に、何かと閉鎖的な感覚を抱いていました。そこでイタリアの文化に触れ、その開放的な空気に触発されました。とにかく表現の幅が広い。イタリアで目の当たりにしたその感覚、楽しんだ時のことを忘れずに日本でも活動したいと思っています。

渡邊) うん、なるほど。では、イタリアで衝撃的な事って何かありましたか?

大石) そうですね…、自分で先回りして考えながら物事に取り組む、っていうことを学びましたね。イタリアでは全てにおいて後回しというか(笑)。でも、それを見越して先回りすることで、全部自分で出来るようになっていく気はします。自立心はついて来ますね。自分自身がある程度の知識を持って取り組むと、最終的には帳尻合わせができてくる、という感覚をつかめるようになりました。同時に全体の流れを俯瞰する訓練、そこを実践の中で学んで行ったように思います。


必然的に他者の気持ちを考える状況をつくる


渡邊) それでは「クリエイトすること」って大石さんはどんな風に捉えてますか?

大石) 基本的には自分の作ったものを第三者に見てもらった時に、インスピレーションを与えられるものか?ということを意識しています。独りよがりに作るよりも、周りがそれを見ることで何かを感じ取って、次のアクションに繋がるような、人を魅了できるようなものを作りたい、その思いが一番です。
そこが根底にある為、今のところメンズは考えていません。あえてウィメンズの作品を手掛けることで、必然的に他者の気持ちを考える状況をつくっています。自分以外の誰かに対して、何か感じてもらえるようなものがやりたい、っていう思いが強いんです。常にそういう気持ちでクリエイションに向き合っています。

渡邊) その発想はいつから?そしてどこから来たの?

大石) ファッション自体をやり始めたのは専門学校からですが、それまではスポーツばかりしていた人間なので(笑)

渡邊) どんなスポーツを?

大石) 剣道と陸上競技です。
剣道は小学生の頃から道場に通っていました。中学高校時代は剣道に加えて学校の陸上部に入っていました。
その後専門学校への入学を機会に、デザイナーをやろうって決めた。その時点ですでに、商業デザイナーよりもクリエイターになりたい、という気持ちが強かったように思います。見る人を意識してモノづくりをすることで、そこに繊細さができていいものになると信じて創作しています。専門学校でデザイナーをやろうって思った段階から、クリエイターの感覚を持つことを意識して来ました。

渡邊) なるほど、面白いですね、考え方として「クリエイターになろう」という感覚ですね。

大石) 私は、何か新しいものを作るのがデザイナーだと思っています。なので、商業的視点を持ってモノ作りをするのではなく、あくまでクリエイターとして動いていたように感じます。

渡邊) そんな大石さんは「ファッションの今」をどう見ていますか?
ファッション業界、ファッションにまつわる世界全体、イタリアも含めてもっとこうなったらいいな、などありますか?

大石) 秩序のない世界が好きなんですよ(笑)。無秩序の世界観、各々が好き勝手やれる、そんなファッションの世界が見ていて一番楽しいと思っているし、イタリアでそれを散々思い知らされたので。
日本では自由にやっていいと言いながらも、基本的には道を決められているようなところがあるな、と思っていました。でも、イタリアだと明らかに色んな道があり、それを許容する社会があり、結果ブランドが大きな企業に成長していく、そう感じています。なので、各々が自身のスタイルを追求し、やりたいようにクリエイションしていけば、楽しい世界ができるんじゃないか?、短絡的に聞こえるかも知れませんが、今はそういう気持ちでいます。

渡邊) そうですね、共感します。

後編へつづく

Profile

渡邊睦

渡邊睦 |  NEW ENERGY コンセプター兼
クリエイティブディレクター

2002 年に渡仏し、帰国後に 合同展 rooms を設立。 2009 年「繊研賞」、2011 年「毎日ファッション大賞 内 鯨岡阿美子賞」を受賞。 2022 年に独立し、Blue Marble を旗揚げ。

大石龍弥

大石龍弥 |  第96回装苑賞 NEW ENERGY特別賞受賞

小井手学園小井手ファッションビューティ専門学校卒業後、渡伊。ISTITUTO MARANGONI MILANO卒業後、ミラノファッション協会サポートの元ミラノコレクションのオンスケジュールでコレクションデビュー。

「若い才能を発見し、世に送り出す」 それが装苑賞の精神です。 装苑賞は、昭和 31 年に、日本で初めてのファッション界の新人賞として創設されました。この賞は 戦後いち早く、デザインの重要性と、新人デザイナーの才能の芽を育てることの必要性を感じた先達の知恵から生まれました。その後 60 年以上の永きにわたり、多くの審査員の先生方の御協力を得て94 名の受賞者を世に送り出してまいりました。

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